インコちゃん悲願達成(とらドラ! 最終話レビュー)
未だ雪の残る街中を、息せき切らして泰子が駆けて行く。
既に後戻りは出来ず、いつ帰れるかも分からなかった実家の門を、彼女は決意を秘めて開いたのであった。
それだけの切迫した事情が、彼女にはあったのだ。
そう、あったんだけどねぇ・・・・。
玄関を開けると、そこにはいともあっさりと竜児が鎮座していた。
暫し呆然と立ち尽くす泰子。
そしてその後方より、泰子の両親が歩み寄る。
泰子にとって、竜児を産んでからは初めての親子の邂逅。
「竜児くん、元気にでっかく育てたねぇ。」
母親の優しい言葉に、泰子は只、その場で泣き崩れるのであった。
泰子が取り乱し、長年帰らなかった実家の門を叩いた理由。
それは簡単、大河が「竜児が命に関わる事故に遭った」と偽の留守電を泰子の携帯に残していたのだ。
全てを捨てて逃げようとした泰子も、竜児の危機には黙っちゃいられなかった模様。
多少不謹慎ではあるものの、これは大河の作戦勝ちです。
数十年ぶりに戻ってきた娘に対し、当然の如く厳しく説教をする泰子パパ。
そんな娘に対し優しくフォローする泰子ママ。
その光景は、まごう事無く「家族」のそれであった。
何十年と姿を見せていなくても、こうして語り合う事が出来る。
竜児は「家族」の偉大さを、改めてかみ締めていた。
泰子は、竜児の父親とは結婚していなかったそうだ。
実家の表札が「高須」の時点で予測出来た事ではありますが、父親は泰子が竜児を妊娠して直ぐに行方を眩ませてしまったらしい。
周囲の反対を押し切り、泰子は竜児を産んだ。
おそらくその頃には全てを失いかけていたであろう泰子。
そんな中でも、竜児の存在だけは絶対に守りたかったのだ。
自らの過ちを懺悔する泰子に対し、竜児は自分の存在を主張する。
竜児をここまで育てたのは、誰あろう泰子なのだから。
それは恥も外聞も感じる事無く、誇っても良い事なのだから。
竜児はもう逃げない。
ちゃんと泰子の目の前で大人になる。
竜児の力強い宣言は、実に晴れやかな物でした。
そして大河は冒頭から、そんな高須家の姿を静かに見据えていた。
彼女の中でも、既に答えは出かかっている―――
竜児の寝室には布団が二式。
既に大河と一緒に寝かせる気満々である。
なんという昭和時代の結納w
まぁ泰子の時はこんな露骨な事はしなかっただろうけどね、相手は半ばヤクザだった訳だし。
大河は竜児に電気を消すよう促し、窓から空を眺める。
そして、駆け落ち騒動から感じていた不安感を竜児に語る。
全てが壊れてしまう事に恐怖心を抱いていた大河。
だが実際の所、何も壊れてなんかいない。
ここから二人で始め、ゆくゆくは正々堂々と結婚して、みんなに祝福してもらう。
2-Cのクラスメイトや独身(30)、泰子、泰子の両親・・勿論大河の親の席だって用意してある。
大河や竜児に関する大事な人間、誰一人欠く事無く、皆が幸せになる。
それはとてもとても、素晴らしい事ではないか?
時間はかかるかもしれない、だが二人は必ずやり遂げるだろう。
そして不意に始まる、深夜の結婚式予行演習。
だがこの二人には、既に堅苦しい約束など不要だった。
「俺たちは虎と竜だ、昔から並び立つ物だって決まってる。」
いつか竜児が大河に対し放った一言。
だから、約束なんていらない。
そんな物は無くても、二人は並び立ち、手を取り合って生きていけるだろう。
そして二人はキスを交わす。
幾度と無くキスを重ね、愛を確かめ合う。
既にわだかまりなど存在する筈も無い。
この瞬間、虎と竜は並び立ち、新たな道のりへと歩を進める。
待ち受ける困難や苦悩も、何があったって二人ならば大丈夫。
そんなふうに信じさせてくれるこの二人が、自分はずっと大好きでした。
翌日、泰子の実家を出て三人で家路に着く竜児御一行。
無事家にも到着し、大河に夕飯を食べていくよう誘う泰子。
「うちは三人家族」
そんな泰子の言葉に、大河も安らぎを感じていた。
だが、大河にはまだ、もう一仕事残っている。
現実から逃げず、手に入れられる幸せは全て手に入れる。
そう決意した大河は、自らの親とも真っ向から向き合わなければならないのだ。
そんな大河の心情を察知したのか、複雑な表情で大河を送り出す竜児。
これは二人で決めた事・・たとえ時間がかかったって、解決しなければならない事なのだから。
竜児と夕飯の約束を交わし、大河は自宅へと戻る。
だが玄関の鍵は閉まっており、室内ももぬけの殻であった。
大河の携帯には母親からの着信が何件も残っていた。
留守電に残されていたメッセージから察するに、大河の母親も現実から逃げた・・・か。
所在がはっきりしている分まだ救いがあるという物ですが・・それにしても「バイバイキーン」って(汗)
原作に比べユニークで子供っぽく演出されてますね、実に良いです。
これまでずっと、「自分なんかが誰かに愛される訳が無い」と思い込んでいた大河。
でも、それは単に現実から逃げているだけだった訳で。
自信がもてない事を、他人の所為にしていただけであって。
夕暮れの夜空、だがその中で唯一光り輝く星を、大河は発見する。
そしてそれを、携帯カメラで写真に残す大河。
それはまるで、自分と同じようで―――
彼女は荷物をまとめ、夜の住宅街を歩く。
もう逃げない。
全てを受け入れ、誇りを持って生きて行く事を、大河は決断したのだから。
そして、竜児に愛されるに相応しい人間に―――
次の日の学校。
クラスの皆を待ち受けていた物は、ゆりちゃん先生の突然の発表であった。
家庭の事情により、大河は学校を辞める事になった。
だが突然そんな事を言われても、簡単に受け入れられる訳が無い。
取り乱す2-Cの面々。
大河に対し、一斉にメールを送り出すクラス一同に和んだw
ほぼ全員が大河のアドレス把握してるって、どんだけ絆が深いクラスなんでしょ・゜・(ノД`)・゜・
場の空気に耐え切れず、教室を出て行く竜児。
それに実乃梨、北村、亜美も追随。
実乃梨は平手打ちを食らわせつつ、大河を行かせた理由を竜児に問う。
だが、一番心苦しいのは竜児なのだ。
出来る事なら直ぐにでも連れ戻したい、なんで全部、一人で決めちまうんだよ、と。
だが、それらの行動は竜児に対する信頼感があってこその物に他ならない。
竜児がいなければ、親と向き合う勇気すら湧いてこなかっただろうから。
だからこそ、竜児は大河の決断を受け入れ、待つしか無いのだ。
彼女が現実を克服し、帰ってくるその日まで、彼は待つ以外の選択肢を残されてはいない。
・・否、それ以外の選択など皆無なのだ。
鍵を任されていたのか、大河の部屋を整理する竜児。
忘れていった通帳とパスポートはさておき、彼は大河の生徒手帳の中から二枚の写真を発見する。
一枚は、キャンプファイヤーで北村と踊った時の物。
北村の写真を発見した際、露骨に嫌な顔をする竜児が芸コマですw
そしてもう一枚は、文化祭での大河と竜児のツーショット写真。
目を潤ませ、大河のドジさ加減を再確認する竜児。
そんな中、竜児の携帯に大河からのメールが入る。
「そういや、好きって言われてなかった。」
竜児も又、自らのドジさ加減に呆れ果てるのであった。
そしてそのメールに添えつけられていた画像は、何故か漆黒の闇――
同時刻、2-Cの面々の携帯にも、大河からの謎の画像が送られていた。
よくよくみてみれば、それは夜空。
そしてそんな夜空の中に、煌々と輝く星が一つ。
解釈は人それぞれあれど、大河は「頑張る」という事を伝えたいのだと思う。
親友の実乃梨だからこそ、理解できる大河の真意。
「自分勝手だな、って思うよ、大河の事。
でも、それでもさ、空は繋がってる。
私達もそれぞれ輝く事が出来れば、どんな遠い所にいたって、頑張る姿を確認し合える。」
みのりんの熱い台詞を「クサさ最高潮」の台詞で一笑に付すあーみんにワロタw
ちょwwwww良い場面なんだから空気嫁って!
でもこの二人がすっかり仲良くなっててなによりだよ。
亜美は唐突に、クリスマスの際に使用したツリーを引き合いに出す。
ツリーの頂点に輝いていたのは、大河御用達のクリスタルの星飾り。
誤ってみのりんが破壊してしまい、必死になって修復したクリスタルの星飾り。
その写真を大河に送ってやれば、彼女も喜ぶんじゃないか?
ばかちー渾身の大企画です、良い事思いつくね本当。
そしてクラス総出で体育館を捜索。
その最中、亜美は大河に対する想い、そして自らのコンプレックスを竜児に語る。
結局、大河と亜美は似たもの同士だったのだ。
「分かってくれる人が一人でもいたら、きっと、大丈夫なんだよね。
たとえそれが、恋じゃなくたって。」
亜美の真意を探る暇さえ与えず、無事に星飾りを発見する実乃梨。
ともあれ、これで準備は整った。
星飾りを持った竜児を中心に、集合写真を撮る2-Cの面々。
撮影はゆりちゃん先生が担当。
そして北村は最後まで裸かよ(笑)
なんとも温かな、2-Cの絆。
真剣に自分自身、そして家族と向き合おうとしている大河にとって、これ以上勇気の湧く物は無かったと思います。
そしてエピローグ。
竜児は早くも卒業式を迎えていた。
着飾る泰子を尻目に、遂に自分の名前を喋る事に成功するインコちゃんに吹いたw
おまい・・エピローグのおいしい所全部持ってくつもりかよw
北村は卒業後、既にアメリカ留学が決まっているらしい。
勉学は勿論の事、きっちりと筋を通して正々堂々と、改めてすみれに告白するつもりでしょう。
原作ラストでハブられてただけに、こういう追加要素は嬉しい限りですね。
能登と麻耶が揃って赤面してるって事は、既に告白済みなんでしょうか?
余裕の春田が笑いを誘います。
下級生の話から、2-Cのエピソードは既に伝説クラスまで昇華されている事が伺えます。
勿論、手乗りタイガー伝説も。
竜児は一人、大河のいない卒業式に憂いを馳せる。
だがその時、教室に見慣れたウェーブヘアーの影を竜児は発見する。
迷う事無く、竜児は走る。
「この世界の誰一人、見た事が無い物がある。
それは優しくて、とても甘い。
多分、見る事が出来たなら、誰もがそれを欲しがる筈だ。
だからこそ、誰もそれを見た事が無い。
そう簡単には手に入れられないように、世界はそれを隠したのだ。
だけど、いつかは誰かが見つける。」
力強く教室のドアを開く竜児。
教室には誰の姿も残っていない、もぬけの殻だ。
しかし竜児は、全てを見抜いていた。
大河のドジさ具合、そして行動パターンも。
「手に入れるべきたった一人が、ちゃんとそれを見つけられる。」
迷う事無く掃除用具入れを開く竜児。
そこに、なんともあっさりと大河がいた。
驚かそうと思ったつもりが、竜児には全てお見通しだったのだ。
目新しい制服等ツッコミ所は多々あれど、いの一番に身長の話題を口にする竜児が心憎いw
そして既に成長が止まっている事が予測される大河はご愁傷様としか・・・
そして竜児は、これまで言いそびれていた一言を、ようやく口にする。
「好きだ。」
ヤバい・・・大河のデレっぷりが尋常じゃありませんw
ともあれ、彼女はいつもどおり暴力的に照れ隠しを断行(笑)
よかった、いつもと変わらぬ日常風景ですw
「そういうふうに、出来ている。」
虎と竜は並び立つ物、どんなに離れていようと、絆は永遠だ。
一つの壁を超え、竜児の元へと戻ってきた大河。
既に迷う事など無い、虎と竜は今後も数々の困難に立ち向かい、共に生き抜いていく事だろう。
てな訳で、素晴らしい最終回でした。
竜児の進路やら大河が戻ってきた理由が欠落しているような気もしますが、そんな事を深くツッコむのは無粋という物でしょう。
進路については原作でもはぐらかしてましたしね、面白かったけどw
24、25話は原作10巻に基づいてはいたものの、スタッフのオリジナル演出が前面に押し出る形になっていました。
アニメスタートの時点では原作9巻が発売されたばかりの時期だった訳で。
おそらくスタッフは竹宮先生から10巻のあらすじだけを聞き、独自の解釈でそれを表現したのでしょう。
だから多少物語の運び方が違ってても、結末はほぼ変わらず。
それでここまで納得がいく最終回を作れるんだから、本当とらドラ!はスタッフに恵まれた作品だと思います。
ともあれ、半年間楽しませて頂きました。
長井龍雪監督他、スタッフの方々、本当にお疲れ様でした。
次はOVAでスピンオフかな(笑)


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